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インタビュー

その人の声が聞こえてきそうな絵が描きたい

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インタビューNO.02 似顔絵師タナカサダユキ先生のインタビュー/後編

似顔絵情報サイト「ニテンナ」2人目のインタビューはタナカサダユキ先生です。私マジェリンと、旦那のかっとが2人で運営している似顔絵教室にゲストとしてお越し下さり、生徒に向けて実演や過去の作品を紹介して頂きました。この記事はその時のインタビューをまとめたものです。(前編はこちら)

 

好きな作家さんや影響を受けた作家さんはいますか?

サダユキ先生:小さい頃は針すなおさん。父が『オール讀物(よみもの)』っていうのを読んでいたんですよ、本屋さんに注文してね。毎月届くんですけど。そこの巻頭のカラーページが山藤先生の絵でしてね。エロっぽい絵を描いていたんですよ。それを僕は「この人好きだな~」と思って、家にあった半紙を当ててボールペンでなぞってましたね。でもそれがのちの山藤章二さんだとはつゆ知らず。

そして同じオール讀物の秋竜山(あきりゅうざん)さん。みんな知らないでしょ。その方の漫画が好きでしたね。

あと富永一朗さんのチンコロ姐ちゃんね。こんな話するの初めてですね。今ふと思い出しました。

かっと:最近影響を受けた人はいないんですか?

サダユキ先生:最近ねー。テレビで浦沢直樹漫勉を見てね、血が騒ぐというか。同じような悩みを持ってるでしょ?作家さんだから。「そうか!アナタもか!」って凄い人と自分を重ねてみたりとかね。あの漫勉の録画だけは消せないですね。

マジェリン:この情報サイトもいつか漫勉みたいになっていけたら良いなと思って始めた感じもあります。そう言えばこの場所から2駅向こうの大阪南港ATCという場所で今日まで浦沢直樹展が開催されていますよ(2017,1,25に終了)。

サダユキ先生:あ、そうなの?今日までなんだ!私ね、素直にそういうの見に行けないんですよ。嫉妬で夜眠れなくなるんですよね。だから手塚治虫展とかもそうですけど、ブラックジャックとかも読んでたんで。もうとにかく上手いじゃないですか。本当に天才的な人の作品をなんか直視出来ない。嫉妬でどうにかなっちゃうので。

かっと:似顔絵描きで嫉妬した人はいないんですか?

サダユキ先生:しょっちゅうしてますよ。だから30代、40代の頃は嫉妬で狂いそうになってました。今はね、何故そんなに腹が立たなくなったというか、嫉妬しなくなったのかなって、分からないんですけど。色んなものを無くすわけですよ、人生の中で。捨てていくわけですよね。ガメつく色んなものを奪おうとか習得しようとかじゃなくて、そろそろ必要な物だけに絞り込んでいく時期なのかなと。

だから最近は私生活でも絵に対してもそう。40点・50点だと思う絵も、何とかしたい!そう思う時はあえてしない方が良い事が多いです。頭が熱くなっている深夜に作業をすると、その作品はだいたいやり過ぎてますから。どうしても気になるんなら一晩寝かして、次の日の頭の中がクールな時にもう一度見る。そうすると「この絵はダメだあ!」とすぐ捨てられる時と、「分かった!ここにペンを入れれば良いんだな良しっ!」と的確なポイントが見える時があるんですよ。

100点を目指していた70点レベルの絵もそのままで良い。ただ枚数を描こうと思うようになりました。本当にここ1、2年ですね。

タナカサダユキ先生の描く芸能人の似顔絵

サダユキ先生のルーツを伺いながら、次に先生が描いた芸能人の似顔絵作品をいくつか拝見しました。一枚一枚に込めた思いやこだわりを丁寧に語って下さいます。

これ、僕はウルフルズが好きで「サムライソウル」。これは知り合いから借りたDVDを見ながらですね、大好きな一場面があったので一時停止して描きました。

ですが、そのまま写し取るというのが一番つまらない作業なんですよ。だから一時停止した画像を借りながら、イメージを仕上げたかった。

そしていつも使っているコピックから出ている筆ペンで。

腰まで伸びた一面の枯れ草の中で彼は歌っているんです。曲が本当に痺れるくらい良いの。で、とりあえず仕上げたんだけど何か物足りなくて、最後の最後にこの炎を足しました。

これを入れて決まったなと思って、だから曲をずっとかけて聴きながら、この拳の部分とかよく見てもらうとザッと揺れるようなタッチで、草むらのウネリなどを意識しながら。

この絵があたかも動いているかのような、そういう意識で描いています。

そして私は映画も大好きで、これは「おくりびと」ですね。亡くなった人にお化粧を施すモッくんですね。

ここで非常に気を使ったのが、亡くなった人の顔は描かなかったんです。それで亡くなった人に化粧パレットで紅を施す時の表情と、それを見守る師匠の山崎努ね。

でも実はこれ原画はカッターで切って修正している箇所があるんですよ。山崎努の腕から膝にかけての輪郭線。もっとモッくんから離れてたんですけど、もう少し近づけてやれと思って。

そしてこのモノクロで描いたキムタクね。これ「華麗なる一族」っていう10年前のドラマなんですけど、この後ろの影を描きたかったんです。

キムタクって別に描きたいモデルじゃなかったんだけど、これに近い写真があって、この手は実際の資料画像にはなかったんですよ。

でもこの人はキザっぽいというか、手の仕草があったほうが良いかなと思って、細いネクタイを外そうとしているような、そんな感じの手を描きたかった。だからこれは筆ペンじゃなくて、コピックのグレーのセピアに近い色を使って描いてます。影も墨じゃなくて、コピックのグレーやセピアを何回も何回も重ねました。

これはアクリル絵具とか、カラーインクを使ってた頃の作品なんですけれど、これは非常に大きな作品です。A3以上の紙に描いたもので「ユージュアル・サスペクツ」という非常に大好きな映画で、「ケヴィン・スペイシー」という俳優さんがアカデミーを受賞したと思うのですが、ケヴィン・スペイシーという俳優を知った最初の映画だったんです。

最後に大どんでん返しがありまして、もう瞬きも忘れるようなラストシーンがあるんですよ。気が付いたら本当に一から見直してましたね。

これは20年前に個展に出した作品です。この背景はアクリル絵具でベタ塗りすれば良いところを、カラーインクのブルーでちょこちょこ塗ってます。少しムラが出るんだけど、なるべく出ないように。

そして映画では5人の容疑者という役だったんですけど、このケヴィン・スペイシーが非常に難しかったです。この人はちょっと足の悪い役をやっているんですよ。なので立ち方もそれぞれ描き分けました。

身体や服の部分は黒く塗って、それぞれのディテールは描かないけども、黒く繋がった中に、それぞれの手の表情を入れたかった。それだけなんです。私がこの絵を描きたかった動機はそれだけですね。

飽くなき手の描き方への探究心

サダユキ先生:それで、手なんですけど、今はもう見なくても色んなポーズの手を描く事が出来ます。

マジェリン:私サダユキ先生が描かれる手大好きです!

サダユキ先生:時間がある時に鏡に映して、女性になりきったりね。

一同:(笑)

サダユキ先生:特に顔の近く(デコルテ周辺)に添えられている手が大事なんですよ。その時の顔もまっすぐ向いてるんじゃなくて、ちょっと傾かせたり斜めを向いていたりね。

マジェリン:ほ~!ご自身で常に研究されてるんですね!

サダユキ先生:私は夜中にそういう研究をしているんですけど。例えば夫婦で仲良く、ちょっと頬と頬をくっ付けて、夫が妻を抱き寄せて、そして妻は夫の手を優しく包んでるような、僕が一人で二役をやるんですね。

部屋に姿見があるので、それで隣にエアー妻の肩を抱くような夫のなりきって写真を撮る。そして次に妻役になってまた撮る。そして左手の妻と、右手の夫を(ピコ太郎の仕草で)ア゛ーーーーンッ!みたいなね(笑)

一同:爆笑

サダユキ先生:とりあえず、そういう(自分で研究して撮った資料画像)のストックをいっぱい持ってるんです。人様にはお見せ出来ないんですけど。

マジェリン:それは確かに見せられないですね(笑)

サダユキ先生:手の色んな仕草・ポーズ、手に持つスマホはどう持つだとか、あとは世代ってのもありますよね。子供が持っているりんごも、大人が持っているりんごも、子供にとってはりんごは大き過ぎるから片手じゃ持てないですよね。だから両手で包み込むような感じで。

だから0歳から100歳くらいまでの、その人達がしそうな仕草・状況、そういったものを色々。ドラマとか映画を観た後似顔絵を描く時に非常に役に立つんですよ。

 

 

確かにサダユキ先生はお話されている最中もハンドジェスチャーが豊かな事に気付きます。モデルになりきる、描きたい被写体のマネをしてみる。これは似顔絵の基本かも知れませんね。

広告用のイラストも手がけ、それが似顔絵にも生きている

サダユキ先生:こういうライフイベント用のイラストなんかもたくさん描けるようにね。これは広告用のイラストです。ボツになっちゃったんだけど。

サダユキ先生:これもボツになったんだけど、とっても良い。コピックで描いたんだけど、下書きなしのフリーハンドです。

一同:えええ~~~~!!!

マジェリン:この葉っぱの真ん中の線は修正液ですか?

サダユキ先生:これ修正液ですね。修正液大好き。

光の演出にもこだわっている先生はまさに映画監督のよう

サダユキ先生:これは採用されました。これはクリスマスの時に、全部コピックで描いたんですよ。くまはクリスマスのカップルで、今からサンタシアターへ行くところなんです。

このライトの感じは「フォトエディタプロ」という無料アプリでやりました。なので実際の原画は光っていません。携帯に原画を取り込んで、指先でぽっぽっぽと光らせたいところを光らせました。これは百貨店のディスプレイに使われました。原画はA4の大きさです。

マジェリン:絵の中でも光の演出を大事にされるのって何だか監督っぽいですね。

サダユキ先生:光はね、とても大事だと思います。

 

サダユキ先生:この松重豊、おしぼりで手を拭いているところなんですけど。これなんかもドキュメントっぽくしたかったんですよね。だから後ろの黄色い光は後で加工したものです。

サダユキ先生:これもね、もう25年前!これはカラーオーバレイというシールみたいなものがあって、色々実験的にやったんだけど、でもつまらなくてやめました。なのでこれは個展のDMに使ったんだけど、線が硬くって全然面白くないし、田村正和の古畑任三郎を、役者としての田村正和ではなくて、ドラマの中の古畑任三郎を描きたかったので、

少しこう前かがみで「ええ~」っとこうやりますよね(笑)あれを絵でやりたかった。でも成功しなかった。

サダユキ先生:これはね、コピックの青紫で描いたんですけど、ブラックライトペンで描いたんですよ。このペンは今でも百均で売ってます。

これブラックライトペンに付いている光をこの原画に当てると、後ろにねこの人が歌った歌詞が出るんですよ。

 

 

サダユキ先生:美空ひばりの代表作ですね。しかも涙もツーっと流れるんですよ。

一同:へえええ~~!

サダユキ先生:これも展覧会用に描きました。ペンをぶら下げて、薄暗くしてペンで光を当てられるように。「夜明けのスキャット」とちあきなおみの「喝采」そして美空ひばりは誰もやらない歌詞の入れ方をしたかった。

出来たらこの人達の歌を直に書かないで、その曲が聞こえてくるような絵が描きたい。そのためには色はいらないだろう、でも線だけで描くとつまらないから。

私が好きな「手ブルブルタッチ」って言うんですね。本当はね、放送禁止用語なので言わないですけど(笑)手ブルブルタッチに言い換えてます。

手を震わせながらペンを持つでしょ。で鉛筆の下書きがあって。最初線をシューっと描いてたんですけど、ちょっと絵の上手い人が描いただけな感じがして嫌や!って紙をクシャクシャッ!として、

背景のシミっぽい感じも、ちょっと熟成した感じも出したかったので、何となく古文書なんかにある自然に出来たシミっぽさを、コピックの薄い薄い、もう000番のピンクとかで描いて、

手を震わせながら絵を描いてる現場をね、うっかり誰かに見られたらヤバイですよ。

サダユキ先生:この由紀さおりはね、この人がこの位置でマイクを持った時に、どんな顔で歌うんだろうか、自分の中で納得いくまでは妥協出来なかったんですよ。この人の声が聞こえてきそうな絵が描きたいなと思ったもんですから、この反対側の手もとてもこだわりました。そしてちあきなおみのこの手!

マジェリン:本当に手好きですね(笑)

サダユキ先生:手好きですね(笑)って言うのも、顔はそこそこ似せれるやんっ!って言うのがあって、特定の誰かじゃない誰かと私は対抗しようとしてるんですよ。

でもこういう線、ツーっといけば2秒で描ける線なんですけど、何せ手ブルブルタッチですからね。そうやって一枚の作品を大事に大事に育てていくみたいな感じで描くっていうのは、一枚一枚に託した思いというのが残ってますので、

その時にこれを描いたのが夏だったのか、冬の寒い夜だったのか、その時の様子だとか、メンタルの状況だとか。あの時凄く辛かったよね、でもこの絵を描いて救われたよねって事もあるんですよ。

なので、似せる事に関しては、ある程度のところまではクリアした上で、そこから先は手の仕草だとか、持ち物だとか、複数の人物を描く時の関係性の表現だとか。そういうところに出来るだけご依頼の似顔絵なんかは丹精を込めるようにしています…

私ずっと嬉しそうに喋ってますね(笑)

会場:(笑)

こうして約3時間半に渡るサダユキ先生の授業は幕を閉じました。

ドラマや映画に対する「好き」という気持ちが作品と向き合う情熱に繋がっているんだという事。そして普段から「らしさ」やイラスト全体の「雰囲気」を生み出すために日夜研究を重ねているんですね。

今回のインタビューを通して、サダユキ先生の作品は執念が滲み出ているような、良い意味で人間臭差があって。だからあの強烈な親近感が作品に宿るのではないかと感じました。

よく似顔絵教室の生徒さんから「喜ばれる絵を描きたい」「その人らしさの出た面白みのある似顔絵を描きたい」というお声を聞くのですが、一度特徴を捉えたら、そこから先どうすれば良いのか、思考が止まってしまう生徒さんが多いような気がしていました。

今回の授業で「絵を考えて描くとは何なのか」をたくさんの具体例を交えてお伝え出来たんじゃないかと思います。

タナカサダユキ先生、トークショーのように楽しくて濃密な授業を本当にありがとうございました!

1963年生まれ/京都精華大学卒/似顔絵歴34年目/似顔絵講師歴15年(インタビュー当初2017年1月25)/テレビチャンピオン似顔絵選手権を2連覇。

現在は京阪百貨店勤務されていて、副業として口コミのみで似顔絵のお仕事をされています。

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interview 2017,01,25

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