似顔絵も1枚のイラストレーションとして飽きないものを作りたい

インタビューNO.03 似顔絵師kunikazu.先生のインタビュー/前編

似顔絵情報サイト「ニテンナ」3人目のインタビューはデザイン的でオシャレな似顔絵イラストを得意とする東京の似顔絵師 kunikazu.さんです。私マジェリンと、旦那のかっと2人で運営している似顔絵教室にゲストとしてお越し頂きました。

kunikazu.さんのプロフィール

東京生まれ

米国ライオグランデ大学 日本校を卒業後、制作会社を経て、フリーのイラストレーターに転身。

1999 名古屋の似顔絵チームお絵かき隊の設立に携わり、創立メンバーとして活動。2001 再び活動拠点を東京へ戻し、現在、東京タワーや結婚式場などで、活動中。日本似顔絵アーティスト協会理事を務めています。

kunikazu.さんのFacebookページInstagram

 

マジェリン:それではkunikazu.さんのプロフィールをお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

kunikazu.さん:よろしくお願いします。

Q 1.アーティスト名を教えて下さい。

マジェリン:まずアーティスト名は全部小文字で kunikazu なんですか?

kunikazu.さん:そうです。最後にドットを入れてます。別に小文字が良いとか、コンビニのセブンイレブンに対抗してる訳ではないんですけど(笑)僕「クニカズ」って連邦の「邦」に平和の「和」って書くんですよ。そして苗字が野口なんで、めっちゃ字が堅いんですよ。中学校の頃に皆さんレタリングの授業とかすると思うんですけど、その時にこの字四角ばっかで堅くて嫌だなーと思って。僕はイラストは柔らかい絵が好きだし、キュートな絵が好きなので、小文字だけにしようと思いました。でもそれだけだとバランス悪いから点付けとこうと思ってドットを付けたんですけど、その後くらいにモーニング娘。が丸を付けてて「僕の方が先なのに」って思ってました(笑)でもよく忘れられがちなんで、小文字だけでも良いです。

 

Q 2.年齢はおいくつですか?

kunikazu.さん:今は45歳です。

 

Q 3.似顔絵歴はどれくらいですか?

kunikazu.さん:僕20年目ですね、ちょうど。

かっと:じゃあ25から始めたんですか?

kunikazu.さん:僕サラリーマンやってたんで。

かっと:それはデザイン会社ですか?

kunikazu.さん:制作会社です、アニメーションとか。僕入るまで知らなくて、スタジオピエロの制作会社にいたんですけど、イラストレーター・デザイナー募集って書いてあったんですね。で、完璧じゃない!?と思って入ったらアニメーション会社だったんですよ。わーダメだなコレと思って、面接で好きな事だけ言って帰ろうと思ったら受かっちゃったんですよ。せっかく受かったからじゃあやってみようと思って3年勤めたんですけど、やっぱり絵を描きたくて。

かっと:そこではどういう仕事をしてたんですか?

kunikazu.さん:裏方の仕事は全部やってました。スケジュール管理から打ち合わせ、お金の管理とか印刷の業務、打ち合わせの仕方とか、全てやりましたね。結構この業界の方って名刺の渡し方とか、上座・下座の知識とか知らない人多いじゃないですか?僕はそこでビジネスマナーをよく教えてもらったので、フリーランスで似顔絵を仕事にし始めてからとても活かされています。

マジェリン:そのサラリーマン時代が終わったらすぐに名古屋の似顔絵チーム『お絵描き隊』を設立されたんですか?

kunikazu.さん:1年くらい空白があって、その頃はビギナーズラックでデッカイ仕事が来るんですよね。一本何十万の仕事をもらってたのでやってたんですけど、一気になくなっちゃうんですよね。それでちょうどその頃右腕を折っちゃって。

マジェリン:えええっ!?

kunikazu.さん:初めて野球をやったら骨が折れちゃったんですよ(笑)そしたらその頃知り合いの知り合いがちょうど名古屋のお絵描き隊を作るって時に、東京から僕を呼んでくれて。「行っても良いですよー」って偉そうに行ったんですけど、そんな事はなく、僕はもう全然下っ端で。僕が制作とか得意だったんで、事務所やりながらお絵描き隊を作ったって感じです。

 

マジェリン:お絵描き隊は何人で立ち上げたんですか?

kunikazu.さん:最初は4人で立ち上げました。

マジェリン:似顔絵を始めた頃から今のような画風だったんですか?

kunikazu.さん:最初は超リアルに描いてました。

かっと:今はその絵は残ってないんですか?

kunikazu.さん:ないですね。昔は描いた似顔絵の写真あまり撮らない方だったので、あまりにも撮らな過ぎて安楽くんからカメラをもらいました(笑)

かっと:今みたいに携帯で撮れないですもんね。

kunikazu.さん:そうですね。本当に手元に残ってないので、当時描いたお客様が持っていてくれてる分か、もしくはお絵描き隊の新人さんを描いたものが残ってるかどうかくらいですね。

マジェリン:もともとリアルだったという事は、何かデッサンなどを学校で勉強されてたんですか?

kunikazu.さん:僕はアメリカの大学(日本に設置されたアメリカの大学の分校)だったんですけど、デザインを習ってました。デザインとリンクするものって写実的な絵の方がリンクさせやすくて。表紙を最初は作ったりしてみたかったので、写実的な絵の方がデザインしやすかったんですよね。でもあまり向かなかったですね。

お客さんを描き始めて、凄くリアルに描いてた時はつまらなかったんですよ。ナルシストなお客さん多くいらっしゃってですね、「描きたくねぇ」って思ってました(笑)格好良くない人を格好良く描けないって、僕の性格の悪さが出てたのでリアルは向いてないなと思いながら描いてました(笑)まあ今はうちの奥さん(ちひろさん)の方がリアルは上手いんで。

Q 4.好きな作家さんや、影響を受けた作家さんはいますか?

kunikazu.さん:好きな作家はいっぱいいますね。でも影響を受けるって言うほど自分が強くなかったので、あまり誰かを模写して今に至るって事はなくて、最近まで誰かの展示も見に行かない方でしたね。飲み込まれて、その人の絵に流れちゃう気がするので、なるだけ見ないで、自分の描きたい絵が出来上がってから見たいなって思ってました。

好きな作家は、たぶん皆さん大阪だと知ってらっしゃると思うんですけど、ユニバーサルスタジオジャパンで働いてらっしゃる高木さんは、この業界に入って初めて「僕の話している日本語が通じてくれる人と出会ったな」って思いました(笑)まぁ、全然僕とは違うし、現場も大会も素晴らしい結果を残せる人なんですけど。僕の絵を凄く理解してくれる方だなと。

あとはまた全然違うタイプですけど、東京タワーで一緒に描いてる田畑さんとかJEROさんとか。僕の人生観を大きく変えた人達なので、彼らがいるかいなかったかはデカいですね。あとはやっぱりmikiさんですね。

マジェリン:好きな似顔絵師さんの他にイラストレーターさんや漫画家さんなどはいますか?

kunikazu.さん:今でも漫画は大好きなんですけど、この絵が好きだからそれを模写するって事はないです。ただイラストレーションを一コマに描ける人は好きです。例えば松本大洋とか。松本大洋の絵って例えば一コマを切り取って壁に貼っても可愛いんですよね。

そういう絵が好きです。僕の似顔絵も1枚のイラストレーションとして飽きないものを、似顔絵過ぎるとそれに意味を持ってしまうと思うんですけど、イラストレーションは何気ないポスターだったりカレンダーみたいな感覚で貼っておける物だと思ってるので。同じように置いても邪魔にならない物を描きたいです。

 

かっと:先ほど、昔はあえて影響を受けないようにしていたと言っていましたが、お絵描き隊の描き方って結構決められてるじゃないですか?決められた描き方に抵抗はなかったんですか?あの描き方も一緒に考えたんですか?

kunikazu.先生:うーん、僕が居た頃はまだ本当にお絵描き隊が始ったばかりだったので。こうしよう!ってのをみんなで一生懸命考えました。でも僕はワガママだったので全部が全部同じようにはやらなかったですね~(笑)

例えばお絵描き隊では透明水彩で肌色を塗っていたんですけど、最初に僕はパステルでリアルに描いてました。水彩にしてからは肌の色にジョンブリアンを使っていたのですが、ジョンブリアンを使うと主線が濁るというか、主線の黒が黒じゃなくなっちゃうので、

茶色のバーントシェンナーとかあるいはバーミリオンヒューとかを肌色の表現に使おうというのは、当時のお絵描き隊メンバーみんなで考えました。

かっと:お絵描き隊って白黒仕上げとフルカラー仕上げの他にセピアってメニューがあるじゃないですか?あれも当時からあったんですか?

kunikazu.:最初は白黒とカラーしかなかったんですよ。でも売れなくて。白黒ばっかりが出る現場とかがあったので、白黒がお一人800円で、カラーがお一人2,000円だったので。例えばお客様が5人を一枚に描いて欲しいとなると、白黒は4,000円、カラーは一万円になってしまって、どうしても差が大きくて当時お客様から「その中間くらいは出来ないの?」ってご要望がたくさんあって。

そこからセピアという仕上げ方が生まれました。でも僕セピアで仕上げるの大っ嫌いだったので、基本やりませんでした(笑)

マジェリン:なんだか嫌いなものが多いですね(笑)

kunikazu.:ワガママでした(笑)僕の絵にセピアって全然合わなくて、なのでなるべくセピア仕上げの看板は出さなかったです。当時の僕の絵は今よりもポップで、でも現場で試行錯誤しているうちにリアルな要素も足されて、今の絵柄に至る感じです。

かっと:じゃあお絵描き隊の皆さんのように筆ペンの線の強弱を使う事はなかったんですか?

kunikazu.:なかったですねー。ブライダルアートの時は筆ペン一本で仕上げますけど、基本的には今でも線の強弱が苦手です。本当はデジタルのように均一な線が好きです。

Q 5.最後に自分は似顔絵でお客様にこんな風に喜んでもらいたいなとか、こういう似顔絵を描けるように心がけてますなど、何か志のようなものはありますか?

kunikazu.:現場では色んなお客さんが来てくれるタイプではないと思っていて、今はリピーターさんで成り立っている感じです。

また来年も描いてもらいたいなって思ってもらえるように、一年後の自分はどれだけ上手くなれるかって事を常に考えていますね。

1枚だけ描いて満足されるっていうのが、僕はあんまり好きじゃなくて。と言うのも1枚の絵で満足されちゃうと、それは2,000円の絵じゃなくて、実は何十万の価値になっちゃうと思うので。

例えばおじいちゃんの肖像画とかあるじゃないですか?ああいうのは何十万の絵だと思うんですけど、僕たちはアートじゃなくて、低価格で若干消費者に近いような感覚があると思っているので。低価格で何度もリピートしてもらって成立するのが似顔絵だと僕は思っているので。

何枚も描いてもらって、それをたくさん部屋に飾って「あの時こうだったよね」って会話が生まれるような、何枚飾ってもインテリアの邪魔にならないような、そういう絵を描いていきたいなと思っていますね。

インタビューの後半は生徒さん4人にモデルをお願いし、それぞれ違うタッチで実演を披露して頂きました。

kunikazu.さんの似顔絵はインテリアの中に自然と馴染む似顔絵を意識して生まれたタッチなのですね。

ご自身の事をワガママな性格だとおっしゃっていたり、実際にお話を聞いていると嫌いな物がたくさんあったり。アーティスト気質な部分が垣間見えるインタビューとなりました。

後編では実演をしながら質問に答えて下さったkunikazu.さん。デザインタッチの似顔絵の考え方や、結婚式の間に約60人ものご来場者を一気に描きあげる「ブライダルアート」についてなど、様々なお話しをお伺いする事が出来ました。

インタビューは後編へと続きます。

Interview 2017,03,22

©︎マジェリン

 

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