この記事の目次
インタビューNO.03 似顔絵師kunikazu.さんのインタビュー/後編
似顔絵情報サイト「ニテンナ」3人目のインタビューはkunikazu.さんです。私マジェリンと、旦那のかっとが2人で運営している似顔絵教室にゲストとしてお越し頂きました。
この記事は授業の後半で生徒さん4人にモデルをお願いして、kunikazu.さんに似顔絵の実演をしてもらいながらお話しした内容をまとめたものです。(前編はこちら)
そして今回は似顔絵師亀谷友輝さんにもインタビューをする側として協力して頂きました。
かっと:使っている画用紙はM画用紙ですか?
kunikazu.さん:そうです。サンフラワーペーパーのM画用紙を使っています。
マジェリン:下書きが早いですね!
kunikazu.さん:多分ブライダルアートをやっている影響だと思うんですけど、下書きは自分の安心要素なんで、ある程度大丈夫って感覚まで描いてます。あとはキリがないんですよね、どれだけでも時間かけて良いよって言われると1時間でも下書きしちゃうので。なので時間を決められたら、決められた中で描いてます。
ブライダルアートとは?
kunikazu.さんは似顔絵のお仕事の中でも『ブライダルアート』が出来る数少ない似顔絵アーティストです。ブライダルアートとは結婚式場でゲスト全員を式の時間内に描きあげる似顔絵パフォーマンス。白黒で描かれる事が多く、モデルお一人あたり2〜3分で仕上げるのが主流です。今回のインタビューではこのブライダルアートのお話も聞く事が出来ました。
マジェリン:ブライダルアートっていう仕事をご存知じゃない方も多いと思うんですが、ご依頼は直接新郎新婦さんからご依頼があるんですか?
kunikazu.さん:式場と契約していますけど、東京タワーの現場で描いた新郎新婦さんから直接依頼を受ける事もあります。
マジェリン:披露宴に出向いて、お一人2、3分で白黒で出席者全員をお描きするんですよね。kunikazu.さんお一人で何人ぐらい描かれるんですか?
kunikazu.さん:僕は平均で60人以上描きますね。
マジェリン:1回の披露宴で描いた最高記録人数ってどれくらいなんですか?
kunikazu.さん:一度だけどうしても僕を指名してくれたお客様がいて、最高で109人を描きました。
マジェリン:109人!凄いですね!!
kunikazu.さん:そのお客様は似顔絵に合わせて式自体も長めに時間を組んで披露宴をされていました。でも少ない時は少人数の結婚式で25人とかの時もあります。
マジェリン:普段ブライダルの現場はお一人で入る事が多いですか?
kunikazu.さん:いや、ちひろさん(kunikazu.さんの奥様)と二人で入る事が多いですね。
マジェリン:ブライダルで描いてる最中ってお客様と会話するんですか?
kunikazu.さん:しますよ。いくら2、3分といえど描かれてる側は超長く感じるので、普通に「今まで描いてもらった事ありますかー?」とかはお話ししますね。
マジェリン:ブライダルは基本立ったまま描かれるんですか?
kunikazu.さん:立って描きますね。その時々で臨機応変にって感じですけど。
マジェリン:しゃがんで描いたりもあるんですか?
kunikazu.さん:しゃがんで描く事はないですね。なので、今日は座ってブライダルタッチを描くのがめっちゃ不思議な感じです(笑)
髪の毛の描き方について
マジェリン:髪の毛は下書きもしないんですね!?
kunikazu.さん:髪の毛は最後にフワフワに描きたいので。最後まであたりも描きません。
マジェリン:え、後ろから子供とかガーガー言ってこないですか?(笑)
kunikazu.さん:ガーガー言ってきたら「うるさいな」って思います(笑)あと髪の毛の描き方で気を付けてる事で、髪の毛の色が薄い似顔絵って凄く安く見えるんですよ。凄く手抜きに見えて「えっこれで2,000円なの!?」って思われるのが嫌なので、髪の毛の色はしっかりコントラストをつけるように気をつけていますね。
あとは例えば一枚の絵に黒髪の人と金髪とか茶髪の人を一緒に描く時に、黒髪の色が薄いと凄く安っぽく見えるような気がして、そういう理由もあって、髪の毛の色を気を付けるようになりました。
かっと:今まで一番嫌だったお客さんはどんな人ですか?
kunikazu.さん:あー、まだ写実的に描いていた初期の頃に描いたお客さんですね。すっごくカッコつけて目の前に座られて、ずっとポーズを決められてたんですけど、僕性格悪いんで、全然そのポーズで描かなかったんですよ(笑)で、途中で絶対にこのポーズで描いて欲しいんだろうなと思って「え、あ、もしかしてそのポーズで描いて欲しかったですか?」って聞いて、「あ、そんな事ないですよ」みたいな空気感だったので「あー良かった描いてないですー」って丸く収めました(笑)
一同:(笑)
かっと:お客さんとケンカになった事ないんですか?
kunikazu.さん:今んとこないですね。僕今までリジェクトされた事がないので、ずっとこのままでいきたいですけどね。
肌の塗り方や仕上げ方について
kunikazu.さん:顔の中はできれば凹凸がないようにというか、絵の具のにじみで作りたいんですよね。なので絵の具のにじみを考えて塗っていきます。一枚の絵でなるだけ成立させたいので、何かしらのアクションをつけるというか、例えばアシメにするとか、現場の絵でもアクションを付けるようにしてます。正面でただそのまま描かないようにしてます。
デザインタッチについて
亀谷さん:デザインタッチの構成って自分の中に法則というかルールってありますか?
kunikazu.さん:全くないですね。「記号化してみよう」って、人に教える時は伝わりやすいので、そう言うんですけど、自分の好きなものをチョイスして描いているって言う感覚ですね。
亀谷さん:じゃあ、例えば同じタイプの顔を描いて並べた時でも、その時によって処理が違う感じになってるなーと感じることはあるんですか?
kunikazu.さん:ありますね。結局、インプットする時は何も考えてないんですよ。座った瞬間から考えると固定概念が生まれちゃうんで、どーしたい、あーしたい、というよりは見えてるものをそのまま描こうとするんですけど、それをどう処理するかというアウトプットの段階で初めて考えている感じですね。
マジェリン:でも短時間で何パターンもの絵を仕上げられるのって凄いですね。切り替えが凄いです。
kunikazu.さん:僕は多分すごいぶきっちょなんで、人より練習してるんですよね。本当は練習するの嫌いなんですけど、とにかく描きまくる。
▲左から似顔絵アーティスト協会FBコンテストの作品/勉強会の作品(モデルも作家さんです)/世界大会の作品(モデルも作家さんです)
kunikazu.さん:似顔絵アーティスト協会のFacebookコンテストや勉強会があるので、※コンテストは練習の場と考えていて、色んな事をやってみたり、色んな画材を試してみたり、今はこれにこだわってるからこれやってみようとかをやる場所で、※勉強会は少しそれをお披露目するような感じで。
カラオケで例えると、ちょっと仲良い友達とこれ練習してみようかなとか、これ発表してみようかなって感覚が勉強会で、※大会はこの曲一番良い感じだよねって言う状態で発表するのが大会っていう感覚ですね(笑)
※コンテスト:日本似顔絵アーティスト協会の公式Facebookで行われている似顔絵コンテスト
※勉強会:作家同士が集まってお互いを描き合い勉強する場
※大会:日本似顔絵アーティスト協会が主催している似顔絵大会
かっと:コンテストの絵は結構早く描いているんですか?
kunikazu.さん:うーん、僕は考える時間が長いんで、考えてますねずっと。ちひろさんとどっか出かけたりしてる時とか、現場の空いてる時間とかに百均で買った子供が使うような自由帳にめっちゃスケッチをある程度しますね。一発で決まる場合もあるし、何回も書き直して決まる時もあります。
布袋寅泰さんが僕好きなんですけど、昔「一曲の曲が完成しない時は世の中に出さなくて良い時だ」って言ってて、僕も完成しない時って取ってつけて足したような絵になってしまうんで、世の中に出さないって決めてますね。なので、世の中に出さないまま終わってる作品もたくさんあります。
かっと:絵以外からヒントをもらう事も多いんですか?
kunikazu.さん:むしろそっちが多いですね。電車乗った時のつり革広告だとかですかね。
かっと:それは写真を撮るんですか?
kunikazu.さん:撮らないですね。どれだけ頭の中に残しておけるか。それを撮って保存してしまうと、それをコピーしてしまおうっていう頭が働いてしまうので、記憶に残して、それを自分の絵に変換出来るかどうかが大事かなと。
かっと:模写もやらないですか?
kunikazu.さん:模写も苦手ですね。
▲2016年博多の勉強会で描かれた作品(モデルは芸能人ではありません)
マジェリン:普段このデザインタッチって大会以外でも描いたり販売されたりしてるんですか?
かっと:博多で一度されてますよね?
kunikazu.さん:ああー。普段大会って自分が選んだ人だけ描けるんで、どうしても自分が選ばない人ってどんな絵になるのか分からなくて。自分が選ばない人がお客さんで来たらどういう風に出来るんだろうって。
マジェリン:なるほど、博多の時はそういうチャレンジだったんですね。
kunikazu.さん:そうです、自分の限界を探ってみたって感じです。
マジェリン:東京タワーでこのデザインタッチをお願いしたら描いてもらえるんですか?
kunikazu.さん:やんないですね(笑)
マジェリン:じゃあ今日描いてもらえる生徒さんは特別なんですね(笑)
こうしてインタビューと実演は無事終了
生徒さんの中から4人にモデルをお願いして、左から
- 白黒早描きブライダルタッチ
- 現場のカラータッチ
- 白黒デザインタッチ
- 現場の白黒タッチ
の計4パターンを披露して頂きました。
似顔絵を手渡された瞬間の生徒さんの表情がとても嬉しそうですね。
インタビューに答えながら、作画クオリティとスピードが全く落ちない事にビックリしましたが、それ以前に安定した画風を4パターンも持っている事も凄いですね。いつもkunikazu.さんの作品を拝見する度に、どんな事を考えながらこのフラットなデザインタッチの似顔絵を生み出しているんだろう?と気になっていたのですが、インタビューを通して、やっとkunikazu.さんのお人柄と作品が私の中で結びついたような気がしました。
やっぱりお話を聞くと作品の楽しみ方が広がりますね。
kunikazu.さん!素敵な授業を本当にありがとうございました!
Interview 2017,03,22
©︎マジェリン
kunikazu.さんのプロフィール
東京生まれ。
米国ライオグランデ大学 日本校を卒業後、制作会社を経て、フリーのイラストレーターに転身。1999年 名古屋の似顔絵チームお絵かき隊の設立に携わり、創立メンバーとして活動。2001年 再び活動拠点を東京へ戻し、現在、東京タワーや結婚式場などで、活動中。日本似顔絵アーティスト協会の理事を務めています。
◆インタビューが行われた似顔絵教室(大阪)
マジェリン&かっとのプレゼント似顔絵教室